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糸が織りなす物語


私たちのふるさと
中国地方の奥の奥。糸にゆかりの里山には、
今日も心地よい風が吹いています。
初めて津山(つやま)を訪れる人は、町を包む歴史的な風情に驚くのではないでしょうか。現在の加茂繊維本社がある岡山県津山市は、江戸時代、勤勉で進取の気性に富む蘭学者を多数輩出した城下町。10万人ほどが暮らす、こぢんまりした地方都市です。


市中心部から30分ほど北上した美作国加茂町(みまさかのくにかもちょう)が、加茂繊維創業の地。山と川と田畑に囲まれた、清らかな風が吹き抜ける山里が、私の生まれ育ったふるさとです。農業と林業が主要産業のその町で、先代は、縫製工場を立ち上げました。以後半世紀にわたり、日本を代表する肌着メーカー・グンゼの協力工場として、「品質第一」の精神と質の高い縫製技術をひたむきに学び続けてきたのです。
しかし、時代とともに、縫製の現場は海外に流出していきます。メイド・イン・ジャパンが誇る〝ものづくり〟の火を消したくないと思い悩み、「私たちにしかつくれないもの」を模索していたときに、ブラックシリカという名の遠赤外線を発する鉱石に出合いました。やがて数々のご縁に導かれ、十数年の研究を経て開発されたのが、その石を繊維に練り込んだ糸『BSファイン』です。その糸は私たちに〝理想の肌着づくり〟へ続く扉を開いてくれたのです。
若い頃、私は海外の多くの土地を訪ねました。外から日本を眺めて分かったことは、日本のどこに暮らそうと、外国から見ればそこは日本に過ぎないという事実です。世界の中心は「場所」にあるのではなく、自分の「志」に宿るのではないでしょうか。大切にすべきことは、いつも足元に広がっているように思えます。
たとえ遠くの小さな存在でも限界を決めず、妥協せず。今までどおりこれからも、私たちの原点が息づくふるさとにしっかり足をつけ、ものづくりの心と技を真摯に磨いてまいります。
加茂繊維株式会社代表取締役 角野 充俊
私たちの道のり
地味に真面目にコツコツと。振り返れば、
あっという間に50年が経っていました。



岡山県は美作(みまさか)の地
加茂町(かもちょう)にて創業
1947年(昭和22年)、角野敬治が創業した『角野商店』は山仕事に始まり、73年にはグンゼの下請けとして縫製工場を設立。近隣に住む兼業農家の女性たちを働き手に迎え、長ズボン下の生産に取り組みます。80年代には日産1万枚もの肌着を大量生産するまでに拡大しました!

二代目にバトンが渡されます
1989年、京都で建築設計をしていた長男・充俊がUターン入社。工場長として、ものづくりを徹底して追求します。93年に社長就任。工場革新活動や人材教育を実践し業績を伸ばしますが、「地方で事業を続けて行くには独自性が必要」と、縫製技術を生かす自立の道を模索します。
チャレンジと失敗が可能性を運ぶ!?
肌着だけではなく高級下着の縫製を受注したり、アウターのOEMにもチャレンジ。慣れない仕事に四苦八苦しつつも昼夜を分かたずものづくりにのめり込み、結果として新たな技術を習得。さらに海外の有名デザイナーと協業し、自社ブランドを立ち上げ東京の百貨店で展開するも、商習慣の違いに納得できず2年で撤退。道はまだ見えません。



人を「冷え」から守る
理想の肌着をつくりたい
2000年、あるご縁から遠赤外線を発する鉱石・ブラックシリカを練り込んだ特殊糸の開発を決意。4年の歳月をかけ新・機能繊維『BSファイン』を開発し、さらに10年をかけて量産化。理想の肌着『着る岩盤浴BSファイン』の商品化に漕ぎつけました!2019年には本社社屋を加茂町から津山市中心部に移転。今、加茂繊維は、縫製工場から素材メーカーへと事業の幅を広げつつあります。
の糸ができるまで

原料は天然の黒い石。
北海道で採掘します
BSファインは、堆積した海藻類が数億年もの間に圧縮され生成された天然鉱石が原料。綿花や蚕と同じく自然由来です。ブラックシリカと呼ばれるこの鉱石を掘り出すことが、糸作りのスタートです。
粉砕した石を
選別し品質チェック
ブラックシリカは炭素を多く含み遠赤外線を発します。採掘された鉱石は選別・洗浄・乾燥後、1センチ程度に粉砕。さまざまな項目で、遠赤外線効果の品質を確認します。
砕いて砕いて
さらに小さく、煙のように
品質が確認された石はハンマーミルで1ミリ程度に。そしてさらに75ミクロンまで粉砕され、ふるいにかけられます。その時点ではもはや石というよりも、空中をふわり漂う煙状態に。さらに1ミクロン以下の世界へ。 *1ミクロン=1マイクロメートル=1000分の1ミリ
煙を固めてペレットに。
糸になる準備が整います
超微粉末のブラックシリカをポリエステルに練り込んでペレットを作り、これを高温融解していよいよ糸を紡ぐ作業に!24本の糸を撚って1本に仕上げたBSファインの生糸は9000メートルもの長さです。
長い糸と短い糸で
無限大の可能性を持つ糸に
長い糸はブラックシリカの特徴を最大限に生かした肌着作りなどに。また、生糸を150本束ねて縮らせ、51ミリにカットした短い糸から綿を製造。この綿を他の素材と混ぜ合わせて紡績することで、BSファインは、多岐にわたる新たな高機能繊維の開発が可能になったのです。
私たちのヒミツ
加茂繊維には、私たちならではの
〝加茂品質〟があります。
心密かに誇ることを、ぜひ知ってください。




一人一人が、日々、
心と技を磨く職人集団です。
かつて「ものづくり大国」と呼ばれた日本を支えたのは、熟練した技を持つ職人たち。彼らの見事な手仕事には、狂いのない正確さと理にかなった美しさ、そして精進がありました。そこに美徳を見いだすのは、日本人特有の感覚かもしれません。
実は私たちも、ものにはつくり手の心が表れる、と信じています。「ものづくりは人づくり」と思えばこそ、社員一人一人の技術も、仕事に取り組む姿勢も、磨きつづけてきました。
例えば、毎朝始業前に全員で行う環境整備。自分が使う道具だけでなく、床や空調などの設備を、あらかじめ立てた計画どおりにピカピカに掃除します。ものづくりの現場から汚れや無駄を省き、整えることで、心も整い、集中力が高まります。
縫製社員は少人数ですが、精鋭揃いです。ミシンを肌着用に改善し、どんな生地でも美しく縫えるよう調整を続ける者。生地に隠れた小さな傷一つ見落とさぬよう、優れた動体視力で素早く検品し、裁断していく者。一人で複数のミシンを使いこなし、手先の感覚と体に染みついた呼吸を頼りに一気に縫い上げていく者...。全員が、昔ながらの職人気質と技を持っているのです。
ミシンは大切な仕事道具。退社前にはミシンを掃除し、始業前には隅々まで磨き上げます
流れ作業ではなく、1人の職人が1枚の肌着を仕立てます。針の動きは膝で調整
さらに快適なものづくりの環境を整えるため改善要望は即座に解決していきます




BSファインは、
私たちの想いが詰まった理想の糸です。
強く願えば叶うというのは真実なのでしょう。天然鉱石ブラックシリカとの出合いは、私たちにとってそんな体験です。
世界の消費経済が激しく変わるなか、日本のものづくりを守るために私たちに必要だったのは、縫製技術プラスアルファの〝何か〟。企業として自立できる、唯一無二のオリジナリティでした。岩盤浴にも使われるブラックシリカは、蓄熱性・放熱性に優れ、常温で遠赤外線を発します。そこで、この鉱石を練り込んだ糸ができれば、世界のどこにもない理想の肌着をつくれるのではないかと考えたのです。
とはいえ、特殊繊維を開発する技術も設備もない私たち。想いを実現してくれたのは、長年紡ぎ続けた人のご縁でした。
多くのご協力と歳月をかけて誕生した『BSファイン』は、ブラックシリカの機能をあますことなく封じ込めた糸。髪の毛よりも細く軽いのに、その1本は24本の糸を撚ってできていて、簡単には摩耗しない強度を秘めています。
糸の完成を目の当たりにしたとき、我が子が生まれたような感動を覚えました。奇跡とすら思いました。願いとご縁を撚って生まれたこの糸には、私たちのものづくりへの熱い想いが込められています。
BSファインが高機能複合短繊維として進化した結果、軽く保温効果の高い椅子の張り生地が完成
超軽量素材やウールなど他素材との組み合わせで次々と新しいBSファインの商品が生まれています
遠赤外線を発するブラックシリカの原石




肌着で養生という
健康習慣を提案します。
『着る岩盤浴BSファイン』の肌着が持つ最大の特徴は、常温で遠赤外線を発する点です。人の身体は8〜14ミクロンの遠赤外線をよく吸収し、熱作用を起こすことが知られています。つまり、繊維の中の鉱石が発する遠赤外線で身体が温まり、その体温を生地が蓄熱・放熱して体温を一定に保ち続けます。遠赤外線は目に見えませんが、光と同じ電磁波の仲間で、熱線ではありません。
日本人の平均体温は36.55度〜37.23度。もしもあなたが「冷え」を感じているのなら、私たちの肌着は、あなたの基礎体温を上げるお手伝いができるかもしれません。自分の力で身体の巡りを上げる仕組みは、少しだけ時間が必要です。日々寄り添うことで感じる人肌のようなスローなぬくもり。それを〝じんわり温かい〟と私たちは呼んでいます。また、滑らかで伸びが良い生地は、肌と肌着の間に程よい隙間を作ります。身体を締めつけないこの空気層も、実は、暖かさをキープする鍵です。
小さな養生の積み重ねが健康へと続く道。先日お客さまから「BSファインの肌着はお守りのようなもの」というお声をいただきました。あなたの健康習慣のお役に立てたなら、それこそが私たちの考える〝理想の肌着〟なのです。
着心地のよい肌着は、生地を正確に断ち、美しいパーツを用意することから始まります
『BSファイン』の生地はやわらかく、ミシンかけには技術が必要。生地だけではなく、縫い目でも肌着の伸びやかさを作り出します
縫いあがった商品一枚一枚にアイロンをかけ、ていねいにたたんでパッケージ
私たちの想い
目に見えないモノを大切にします。
衣食住は人間が生きるための三大要素です。「衣」の基本は身体を保護し温め、清潔に保つ肌着。アスリートや登山家のための機能性肌着は早くから開発されていましたが、一般衣料に機能を持たせるという発想が身近になったのは、20年ほど前から。天然鉱石ブラックシリカを練り込んだ『BSファイン』の完成が2004年ですので、奇しくも私たちの糸は、時代と同じ方向を向いていたことになります。
糸の世界も日進月歩。肌着づくりに始まった『BSファイン』は、毛布や椅子などの生活用品にまで幅を広げ、さらに医療や介護の現場でもお役に立てる繊維となりました。それを可能にしたのは、私たちのものづくりを支持し、さまざまなお悩みをお寄せくださるみなさまのお声です。そのお悩みを解決したい一心が、私たちの技術と心を磨いてくれています。


裁断から梱包までの作業は1本のバトンを手渡すようなもの。社員の心を繋ぐのは、「真面目な仕事でより良い製品に仕上げ、お客さまへきちんとお届けしたい」という想い。みなさまのお声と私たちの想いが重なり、紡がれ、撚(よ)られ、いつしかひとつになったとき、目には見えない〝信頼の絲(いと)〟で結ばれていると、私たちは信じています。
幸せとは何でしょう?
健康はどういう状態ですか?
どちらも手に取って見ることはできません。
でも、それらを感じながら暮らすことが
できたなら、「今日もいい日」と思えるでしょう。
私たちは、〝目に見えないけれど大切なこと〟
を紡いでいく企業でありたい。
そう願っています。
会社にはお客さまのお声が、おはがきやお手紙で毎日届きます。「冷えのつらさがやわらぎ毎日が楽しくなった」というお便りに、お客さまのお悩みを解決できた喜びと安堵の笑みが溢れます。
加茂町にある旧本社。人を大切にした先代の想いが詰まった加茂繊維の原点。
一人一人がお客さまへの想いをつなぐリレーチームの一員である私たちは、お互いへの感謝を「サンクスカード」という形で伝えあっています。
社員の誕生日にプレゼントされるバースデーケーキ。このケーキもまた、形を変えたお客さまからのお声だと思っています。


365日24時間、あったかい幸せをお届けします。